バリアフリーリフォームの種類と費用・価格の相場について

バリアフリー住宅

高齢者や障がいのある人が暮らしやすいバリアフリー住宅は、誰にとっても住み心地のいいマイホームの代名詞です。バリアフリー住宅へのリフォームは、介護保険や自治体の補助金を使えるケースがあるほか、減税制度を利用できる場合もあります。

バリアフリー住宅へのリフォームはどのような点に気をつければいいのか、リフォームの費用は公的支援で、どの範囲までカバーされ、どれくらいかかるのかなどを詳しく紹介します。

1. バリアフリー住宅とは?

バリアフリー住宅とは?

バリアフリー住宅とは、高齢者や障がいのある人が暮らしやすいように段差などをなくした住宅のことです。そもそもバリアフリーとは、「バリア(barrier)=障壁」が「フリー(free)=ない」ことを意味し、生活するうえで障壁となるものを取り除くことを指します。

そのため住宅をバリアフリー化すると、高齢者や障がいのある人に限らず、「誰にとっても安心して暮らしやすい住宅」になります。たとえば、足を上げにくくなった高齢者がつまずいて転ばないようにするためには、部屋の段差をなくすのが効果的です。しかも段差がなくなると、よちよち歩きの子どもや、部屋が暗いときには普通の大人にとっても安全になります。

高齢者や障がいのある人のためにマイホームをバリアフリー住宅にすると、その家に住む誰にとっても安心して暮らしやすい家になるのです。

2. バリアフリーとユニバーサルデザインはどう違う?

ユニバーサルデザイン

バリアフリーと並んで、近年よく聞くようになった言葉が「ユニバーサルデザイン」です。

ユニバーサルデザインは、「すべての人が便利に利用できることを目指したデザイン」のことを指し、建物の中のサインに絵文字(ピクトグラム)を採用し、年齢や国籍によらず理解できるものにする、入り口を自動ドアにするなどが挙げられます。

両者の明確な違いは、バリアフリーは「すでにあるバリアを取り除く」ことに焦点がおかれ、ユニバーサルデザインは「はじめからバリアをつくらない」ことを目的としていることです。
広い視点でとらえると、バリアフリーはユニバーサルデザインの一部といってよいでしょう。バリアフリーは、ユニバーサルデザインの中でも、とくに高齢者や障がいのある人に配慮する傾向にあることも特徴です。

3. バリアフリー住宅のポイント

バリアフリー住宅のポイント

それではバリアフリー住宅へリフォームするときには、どのようなポイントを押さえればよいのでしょうか。家の中の箇所に分けて説明します。

① 段差

家の中には意外と多くの段差がありますが、ほんのわずかなものでも高齢者がつまずく原因になります。部屋の境目にある敷居は、家の中でよく見られる段差です。まずは高齢者の利用頻度が高い寝室や浴室、トイレの段差解消を優先しましょう。

段差のある敷居がある場合は取り除き、周りの床と同じ高さの木を埋め込むことで段差を解消できます。そのあと既存の引き戸の高さを継ぎ足す、吊り下げ式の引き戸を新しくつくるなどの加工も必要です。

段差解消にはスロープを取り付ける方法もありますが、滑って転倒しやすくなる点には十分注意が必要です。スロープを取り付けるのであれば、必ず滑り止め加工を施すようにしてください。

② 廊下

廊下のバリアフリー化は、段差をなくすことはもちろん、広さを確保すること、手すりをつけること、そして照明や足元灯で明るくすることがポイントです。

建築基準法では、2階建ての戸建て住宅の廊下幅に対する規定はありませんが、一般的に3尺=91cmとしているところが多く、この幅は壁の芯から測るため、実際の有効幅は78cm程度になります。78cmは1人が通行するには問題ありませんが、すれ違うには少し狭いと感じるでしょう。将来車椅子を利用する、介助歩行をすることを考えると、有効幅が90cm程度あると安心です。

とはいえ現実的に廊下の幅を広げるような大がかりなリフォームは、簡単ではありません。そのような場合、もっとも現実的なバリアフリーリフォームは、手すりを取り付ける工事です。
手すりの高さは、一般的には床から75~80cmがよいとされていますが、使用する人が限定されている場合には、腕をまっすぐ下ろした状態の手首の位置にあわせるのがもっとも使いやすい設置位置です。

また、夜間の消灯時に転倒しないよう、人感センサータイプの足元灯なども設置するとより安心して過ごせるようになります。

③ トイレ

トイレのバリアフリーリフォームの主なチェックポイントは、出入り口、スペースの確保、手すりの設置の3点です。

出入り口は、段差を解消したうえで、扉は開閉がしやすいスライドの引き戸を採用しましょう。またドアの幅も、車椅子を使用することを想定して80cm以上にしておくと安心です。トイレ内は、便器前に1m、便器片側に1m以上のスペースがあるとスムーズに動作できます。

トイレの手すりは、トイレ内を移動するためのもの、便座からの立ち座りや座った状態を安定させるためのものなど、使用目的に応じてI型やL型など、複数設置することがポイントです。また体重をかけても落ちないよう、下地をしっかりと補強することも重要です。

トイレはこれ以外にも、振り返って水を流さなくていいように、使いやすい場所に洗浄ボタンを設置する、床材を滑りにくい材料にするなど細かな点にも気を配るようにしてください。

④ 洗面台

洗面台については、椅子に座ったり車椅子で利用したりできるように、足元に空間があるバリアフリータイプのものが、各メーカーにラインナップされています。
その場合、足元の開口幅は90cmあると、車椅子でも切り返しがスムーズです。

水栓金具については、ひねるタイプは温度調整が難しく、また手首の力が必要になるため、ワンハンドルやタッチ式のもの、メーカーによっては、足元で操作できるものなどもあるため、状況に合わせて選ぶようにしましょう。

⑤ 浴室

浴室をバリアフリーリフォームするときには、トイレと同様段差解消、入り口を引き戸に変えることはもちろん、ぬれて滑りやすいため転倒の危険性を減らすことを重視するのがポイントです。浴室の床材は、乾きやすく、滑りにくいもの、転倒しても衝撃を吸収するやわらかい素材のものに張り替えましょう。

また浴室内での移動で転倒しないよう、手すりの設置も必要です。洗い場から浴槽に入るときにも転倒が発生しやすいため、またぎやすい浅い浴槽に取り替えるのも効果的です。浴槽は、一般的には膝下の高さ、40cmが推奨されています。
浴槽をまたぐときにも手すりが必要ですが、人によって動作が異なるため、実際に使用する人の動きに合わせて取り付けることが大切です。

浴室は温度が高くなるため、脱衣所との温度差によるヒートショック対策も考える必要があります。脱衣所を暖めておけるよう、床暖房やエアコンを取り付けることも、リフォーム時にあわせて検討するようにしてください。

⑥ 玄関

玄関周りは、家の中でもとくに段差が多い場所です。玄関ポーチや階段、靴を脱いで上がるときの上がり框(かまち)がある家も多いでしょう。そういった段差を緩和するためには、式台を設置したり、スロープを取り付ける必要があります。
靴を脱いで上がるときにバランスを崩さないよう、手すりを取り付けると安心です。

玄関ドアも、スペースがあるなら車椅子で楽に通れるように引き戸へ変更する、幅を広げるなどのリフォームを検討してください。ドア幅は80cm以上あると、車椅子での出入りが楽になります。

⑦ 階段

上下移動をする階段のバリアフリー対策は、転倒だけではなく転落の危険性もあるため手すりの設置が必須です。

手すりは片側だけではなく、両側に取り付けると安全性が高まります。たとえば右手が利き手の人には、上り側の右側だけに取り付けてしまった場合、階段を降りるときには逆手になって、とっさに手すりをつかめません。
可能な限り、手すりは両側に取り付けるのがおすすめです。

階段を滑りにくい素材に変更する、滑り止めを設置することも転落防止に効果があります。また夜に移動する場合に備えて、足元に照明を設置することも大切です。スイッチを探さなくてもいいように、人感センサーが搭載されているものを選ぶようにしてください。

4. バリアフリーリフォームの支援いろいろ

バリアフリーリフォームの支援

バリアフリーリフォームには、公的支援が複数用意されています。それぞれの特徴や利用方法を紹介します。

① 各自治体による支援

住宅のバリアフリーリフォームについては、独自で補助金や助成金を用意している自治体があります。自治体の支援制度は、対象となる工事、補助金額などそれぞれ内容が異なるため、まずはお住まいの自治体のホームページなどで詳細を確認するようにしましょう。

申請の条件も自治体によって内容が異なりますが、一般的には住民税などの税金を滞納していない、自治体指定の業者を利用するなどとしているところが多いようです。

また補助金制度を設けているほとんどの自治体が、請負契約前の事前申請を必須としています。契約後や施工後に申請しようと思っても、認められないケースがほとんどであるため、バリアフリーリフォームの見積もりを取った段階で、役所に相談するようにしてください。

② 介護保険制度による支援

バリアフリーリフォームは、国の介護保険制度を利用することもできます。介護保険によるリフォームは、工事の内容が「介護目的でのバリアフリー対応であること」が条件です。また実際に介護を受けている人が、要介護もしくは要支援の認定を受けている必要もあります。

介護保険による住宅リフォームの支給限度額は、1人あたり生涯一律20万円とされていて、複数回に分けての利用が可能です。(実際の支給額は原則1割自己負担のため18万円。ただし前年度の所得によっては自己負担率が2割もしくは3割になる)

介護保険を利用してバリアフリーリフォームをするときには、事前に必要書類をそろえて申請し、工事が終わってから領収書などの書類を提出しなければなりません。介護保険によるリフォームを検討するときには、まずはケアマネージャーへ相談するようにしてください。

③ リフォーム減税

リフォーム費用に対する直接の支援とは異なりますが、リフォームの内容によっては所得税や固定資産税の減税措置を受けられます。

所得税の減税は5年以上のローンを組んだ場合に適用される「ローン型減税」と、それ以外で適用される「投資型減税」があります。バリアフリーリフォームに対しては、ローン型減税で5年間の最大控除額が62万5,000円、投資型減税については最大20万円が工事をした翌年度に控除されることが特徴です。

固定資産税については、固定資産税額の1/3が工事完了年の翌年度に減税されます。

所得税の控除を受けるには翌年2月16日~3月15日の確定申告期間中に申告、固定資産税については工事完了後3カ月以内に物件が所在している市町村への書類提出が必要です。

5. どんな工事が補助金の対象になるの?

どんな工事が補助金の対象に?

自治体独自の補助金については、対象となる工事は自治体によって異なりますが、介護保険については、以下の内容に沿ったものが対象とされています。

① 手すりの取り付け

手すりの取り付けについては、廊下、トイレ、浴室、玄関、玄関から道路までのアプローチなどに、転倒予防や移動の動作を補助することを目的とするものが認められています。

② 段差の解消

リビングや廊下、トイレ、浴室、玄関などの段差や、玄関から道路までのアプローチの段差を解消する工事は補助金の対象です。部屋の敷居を低くする、スロープを設置する、浴室やトイレの床が下がっている場合などは高さを上げる工事などが含まれます。

③ 滑りの防止、スムーズな移動のための床材の変更

居室の場合は車椅子が使いにくい畳からフローリングやクッションフロアなどに変更する、浴室や階段なら滑りにくい床材に変更するなどの工事が対象です。

④ 引き戸などへの扉の取り替え

玄関の開き戸を引き戸にする、室内の扉を引き戸や折戸、アコーディオンカーテンに変更するなど、扉全部を取り替える工事のほか、扉を取り払う工事も補助の対象です。ほかにも握力が弱くなると開閉が難しいドアノブを取り替えたり、扉を動かしやすくする戸車を設置したりする工事も含まれます。

⑤ 洋式便器などへの便器の取り替えや便器の位置の変更など

トイレは和式から洋式への取り替えや、今の便器の位置や向きを変更して使いやすくする工事などが、補助の対象とされています。

⑥ ①~⑤の工事に伴う壁や柱の改修

上記で紹介した工事をするときにあわせて必要になった工事のことです。たとえば手すりを取り付けるために壁を補強する、浴室の床の段差を解消するために排水工事も必要になった、扉を取り替えるために壁や柱の工事も必要になったなどが想定されます。

6. バリアフリーリフォームの各費用・価格相場

バリアフリーリフォームの相場

バリアフリーリフォームの相場を、前章で挙げた5つの工事ごとに紹介します。

① 手すりの取り付け

手すりを取り付ける工事は、手すりの大きさや形状、素材によりますが、廊下の場合で1mあたり5,000~7,000円程度を見積もるようにしましょう。別途取り付け工事費が3万~5万円かかります。

手すりは木製のもの、樹脂製のものと種類が豊富で、握り心地も異なるため、実際に使用する人が握りやすい太さや素材のものを選ぶようにしてください。

② 段差の解消

段差の解消は、現在どのような状況にあるのかによって異なります。敷居を取り除いて周りの床と同じ高さにする工事でも、2万~15万円程度と差が出ます。

スロープを設置する場合でも、どのような素材を利用するかによりますが、2万~10万円ほど見ておく必要があるでしょう。玄関からアプローチにかけての大がかりな段差解消工事の場合には、40万~50万円程度かかる場合もあります。

③ 滑りの防止、スムーズな移動のための床材の変更

車椅子で利用できるように畳をフローリングにする場合には、一般的な6畳間で工事費や廃材処分費なども含めて12万円ほどを見積もるようにしてください。階段を滑りにくい素材に変更する場合には、階段の長さや床材の種類にもよりますが、重ね張りする場合で5万~10万円程度は必要です。

④ 引き戸などへの扉の取り替え

玄関の開き戸を引き戸に交換する工事は、既存のドアを解体して新しいドアを取り付ける必要があり、引き戸本体の価格にもよりますが、1枚扉の片引き戸で30万~50万円程度必要です。室内ドアは引き戸本体の価格が玄関ドアほど高額ではないため、片引き戸で約10万~20万円ほど見積もっておくとよいでしょう。

⑤ 洋式便器などへの便器の取り替えなど

和式便器から洋式便器への取り替えは、便器本体のグレードによりますが、15万~57万円程度が目安です。トイレを使いやすいように便器の位置を変える、広さを広げる、段差工事も同時におこなうとなった場合には、100万円近くかかるケースもあります。

7. まとめ

まとめられる工事はまとめて

バリアフリーリフォームは、ひとつひとつバラバラで工事をおこなうと割高になりがちです。トイレの段差解消工事をおこなうのと同時にドアや床材も変更する、階段に手すりを取り付けると同時に滑りにくい素材へ張り替えるなど、まとめられる工事はまとめておこなうようにしましょう。

介護保険や自治体の補助金を活用するには、対象となる工事かを確認したうえで、事前申請が必要になります。業者選びの際は、過去に補助金を利用した工事の事例があるかどうかを業者に確認するようにしましょう。実績のある業者であれば、申請の書類の準備なども手間取ることなく進められるので安心ですよ。

大久保明彦

記事監修/大久保明彦(おおくぼあきひこ)

  • 株式会社レジェンドホーム 代表取締役
  • 宅地建物取引士

住まいで成功するには、注文住宅と不動産の2つの事業を柱にすることが必須と考え、建築と不動産の両方を強みとする事業を作り上げた。
「真実一路、全てはお客様の笑顔のために」をモットーに、創業以来、地域に密着した住まいづくりをしている。