増築・改築の種類と費用・価格の相場について

家の増築や改築

子どもが産まれて家族が増えた、親と同居することになったなど、さまざまなライフイベントのタイミングで家の増築や改築を考えることがあります。しかし増築をしたほうがいいのか改築をしたほうがいいのか、そもそもこの2つの違いが分からない方も多いのではないでしょうか?

増築と改築は内容がまったく異なるため、違いをよく知ったうえでご自身の家にはどちらが適しているのかを決めることが大切です。ここでは増築と改築の違いや工事費用の相場、価格を抑えるために活用できる補助金などについて詳しく解説します。

1. 簡単解説!「新築」「増築」「改築」の違いについて

「新築」「増築」「改築」の違い

「新築」「増築」「改築」は、建築基準法で明確に定義されています。それぞれの違いをまずは簡単にまとめました。

工事種別 定義
新築 建物が建っていない土地に、新しく建物を建てること
増築 ①すでにある建物に建て増しをすること
②すでに建物が建っている敷地に新しく建物を建てること
(②については、建築物単位としては新築になりますが、敷地単位では増築に該当します。)
改築 建物の全部もしくは一部を取り壊し、または災害などで失った場合に、
用途・構造・規模が大きく異ならない建物を建てること

 

この3つの中で分かりにくいのは、「増築」と「改築」の違いでしょう。

この定義に基づいて分かりやすく説明すると、「増築」は住宅の床面積を広げることが目的のリフォームのことです。平屋を2階建てにする、軒だしして部屋を増やすようなケースが該当します。

一方「改築」は、家を新しく建て替えるケースをのぞけば、一般的には住宅の床面積を変えることなく、部屋の間取りを変更するようなリフォームのことです。柱や壁を取り払って2つの部屋を1つにする、キッチンの場所を変更するなどのリフォームが改築にあたります。

2. 増築と改築のメリット・デメリット

増築と改築のメリット・デメリット

家を建て替えるのではなく、増築や改築でリフォームすることにはメリットもあればデメリットもあるので見てみましょう。

増築と改築のメリット

まず増築と改築のメリットは、住みながらの工事ができることです。家を建て替える場合は、仮住まいを探してそちらに一度転居、工事が終わったら再度引っ越す必要があり、労力も費用もかかります。

家を建て替えるのと比較すると、コストを抑えられることも増築と改築のメリットです。ただし改築については、規模によっては建て替えるよりも高くなる可能性があるため、事前に見積もりを取ったうえで、しっかりと比較検討する必要があります。

増築と改築のデメリット

改築で間取りを変更したいと思ったり、増築で部屋を増やしたいと思った場合は、今ある建物の構造上の理由や建築基準法の制約などによって、希望するプラン通りにはできないこともあります。

増築や改築をした場合、古い箇所と結合した部分に狂いが発生することも。とくに地震などで負荷がかかると、接続部分がひび割れる可能性もあります。今ある建物との耐久性にも差が生じてしまうこともデメリットです。

3. 増築リフォームの際の注意点

増築リフォームの際の注意点

家を建てるときには、地域ごとに定められている「建ぺい率」と「容積率」を守る必要があります。これは増築するときでも同じです。建ぺい率は敷地面積に対する1階部分の床面積の比率を表し、容積率は敷地面積に対する延べ床面積の比率を指します。

ほかにも高さが変わった場合には道路斜線制限や北側斜線制限、高さ制限など気をつけるべき建築基準法の制限がたくさんあります。

新築したときにはこの基準が守られているはずですが、増築によってこの基準を超えてしまわないよう注意しなければなりません。建築基準法の改正などによって、家を建てたときと基準が変わっている可能性もあるので気をつけましょう。

床面積の変更が10㎡以上になる増築リフォームや、防火地域や準防火地域に指定されているエリアで増築する場合には、建築確認申請が必要になります。

また増築の際には、既存部分と接続部分をしっかり固定することがもっとも重要です。外壁もあわせて補強し一体化させると効果的ですが、どうしても費用が高くなってしまいます。増築に関しては、構造設計に関する知識が十分ある会社を選ぶと安心です。

4. 改築リフォームの際の注意点

改築リフォームの際の注意点

改築リフォームについても、やはり建築基準法を守るように十分気をつけることがもっとも大切です。建物の大きさに変更のない内部のリフォームだけであれば問題ありませんが、改築によって建物の形状が変わるような場合には注意しましょう。

改築するのが木造の家の場合、リフォームで壁や柱を取り払っても構造的な問題がないかは必ずチェックする必要があります。とくに2階建ての場合には、荷重がかかっていない2階なら問題ないケースでも、2階を支えている1階は十分注意が必要です。

改築リフォームは、今の家がどのような構造になっていて、どの柱を残す必要があるのか、どこなら問題がないのかを、しっかりと見極めてくれる業者を選ぶことがもっとも重要です。

5. 増築リフォームの種類と費用相場

増築リフォームの種類と費用相場

増築リフォームは、今ある家の構造やどの部分を増築するかによって3種類に分かれます。

工法 内容
差しかけ増築 1階部分の一部を取り壊して部屋を増やす方法。
既存部分の解体が、増築部分と接する一部ですむため費用は安く抑えられます。
おかぐら増築 平屋に2階部分を増築する工事。
1階部分の屋根を撤去して増築するため、柱や梁(はり)の補強が必要で費用がかさみます。
取り壊し増築 1階と2階を同時に一部取り壊して屋根と壁をあわせて増築する方法。
解体部分が大きく、補強などが必要になるため高額になりがちです。

 

増築の相場ですが、一般的な木造住宅の場合で、1坪(2畳)あたり約70万円、鉄骨の場合で約100万円が目安です。2階部分を増築するおかぐら増築の場合には、1階部分に対する補強も必要となるため割高になり、1坪あたり120万円程度見積もる必要があります。

増築部分をトイレや浴室、キッチンなどの水回りとして利用する場合には、配管工事も必要になるので高くなりがちです。設置する住宅設備のグレードにもよりますが、1坪で100万円前後は見ておくようにしましょう。

6. 改築リフォームの種類と費用相場

改築リフォームの種類と費用相場

改築リフォームについても、場所や内容によって料金が異なります。

改築リフォームには、家の一部だけを改修する部分リフォームと、柱や梁(はり)などの構造部分だけを残して内装をすべてつくり変えるフルリフォームがあります。

内装を取り払って間取りを変更するような部分リフォームの場合、改修規模によって約20万~350万円と幅があります。とくに水回りについては、使用する設備のグレードによって費用が大きく上下することが特徴です。
キッチンのリフォームなら約50万~150万円、トイレで約20万~50万円は必要になるでしょう。

部分的なリフォームではなく、内部をすべて取り払いスケルトンにしてしまうフルリフォームの場合には、300万円から場合によっては1,000万円以上かかることも。全面的なリフォームを考えるのであれば、まずは現在の家の耐震性能などをチェックしてもらってから考えるのがおすすめです。

7. 事例で紹介!増築・改築リフォームで使える補助金とは?

増築・改築リフォームで使える補助金

増築や改築には多額な費用が必要になりますが、条件を満たせば国や自治体の補助金を利用できる場合があります。リフォームで活用できる補助金にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

① 高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業(断熱リノベ)

断熱材やペアガラス、高断熱サッシなどを使用して、断熱性能を高める(15%以上の省エネ効果がある)リフォームをした場合に利用できる補助金です。同時に蓄電システムや蓄熱設備(エコキュート)を設置した場合にはこちらも補助対象になります。

補助金額上限は1住戸あたり120万円(窓のみ改修は40万円)で、補助率は1/3以内です。蓄電システムを同時設置した場合は2万円/kWh、補助対象経費の1/3、または20万円のいずれか低いほう、家庭用蓄熱設備を設置した場合は、設備費と工事費の合計金額の1/3以内、または5万円/台のいずれか低いほうが補助されます。

② 次世代省エネ建材支援事業(次世代建材)

断熱材を組み込んだパネルや、潜熱蓄熱建材を用いたリフォームが対象となる支援事業です。窓や玄関ドア、調湿建材、断熱材なども条件に合致すれば補助の対象になります。

補助上限額は1住戸あたり200万円、補助対象経費の1/2以内です。

③ 長期優良住宅化リフォーム推進事業

既存住宅の長寿命化や、性能向上のリフォームを支援するための補助金制度です。補助の対象となるためには、事前にホームインスペクションをおこなって、リフォーム後の住宅性能が一定の基準を満たすことが求められます。

耐震性、劣化対策の基準に達していることはもちろん、省エネルギー性や維持管理、三世代同居対応、子育て世帯向け改修などの基準を、どれかひとつ以上満たすことが条件です。
たとえば親世帯と同居のために部屋を増築、キッチン・トイレを増設し、設備・内外装をリニューアルするような場合は対象となる可能性があります。

長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助額は、1戸につき100万~250万円で、リフォーム後の性能の高さによって補助金の額が異なります。
性能が高くなるほどもらえる金額は大きくなり、また、「三世代同居対応」「若者(40歳未満)」「子育て世帯(18歳未満の子がいる)」に該当する場合には、さらに50万円が加算されます。

事業への申し込みはリフォーム業者がおこなう必要があるため、対応可能かどうか業者に相談するようにしてください。

④ 補助事業を申し込むときの注意点

公的な補助事業に申し込むときには、計画しているリフォームが対象となるかどうかの判断など専門的な知識が必要になります。リフォーム業者によっては、このような事業になじみがないことも考えられるため、制度を利用してのリフォームを検討する場合には、ノウハウのある業者を選ぶようにしてください。

⑤ リフォーム減税

リフォーム費用に対する直接の支援とは異なりますが、リフォームの内容によっては所得税や固定資産税の減税措置を受けられます。

所得税の減税は5年以上のローンを組んだ場合に適用される「ローン型減税」と、それ以外で適用される「投資型減税」があります。バリアフリー、省エネ、同居対応、長期優良住宅化に対しての控除額は、ローン型減税で5年間の最大控除額が62万5,000円です。投資型減税については、耐震、バリアフリー、省エネ、同居対応、長期優良住宅化に対して、最大で50万円が工事をした翌年度に控除されます。

固定資産税については、耐震、バリアフリー、省エネ改修、長期優良住宅化のリフォームに対して、固定資産税額の1/3が工事完了年の翌年度に減税されます。

所得税の控除を受けるには翌年2月16日~3月15日の確定期間中に確定申告が、固定資産税については工事完了後3カ月以内に物件が所在している市町村への書類提出が必要です。

8. まとめ

ここにマイホームをまかせたいと心から思える業者を

増築も改築も、既存の住宅の劣化具合や耐久性を正確に診断し、接続部分に強度を持たせる、家の強度に問題のない柱だけを撤去するなど、家の構造に対する高い専門知識が求められます。補助金の活用を検討する場合にも、対応に慣れた業者かどうかはとても重要です。

業者を選ぶときにはホームページをしっかりチェックすることはもちろん、担当者と直接話をしたうえで、「ここにマイホームをまかせたい」と心から思える業者を選びましょう。

大久保明彦

記事監修/大久保明彦(おおくぼあきひこ)

  • 株式会社レジェンドホーム 代表取締役
  • 宅地建物取引士

住まいで成功するには、注文住宅と不動産の2つの事業を柱にすることが必須と考え、建築と不動産の両方を強みとする事業を作り上げた。
「真実一路、全てはお客様の笑顔のために」をモットーに、創業以来、地域に密着した住まいづくりをしている。